小さな会社では一人一人が様々な業種をこなすというのは良くあることですが、専門の分野とは違う苦手な業務をこなさないといけないとなった場合も当然あるわけです。
今回紹介する転職体験談は、システムエンジニアとして仕事をこなしつつ苦手な営業も担当をしていた男性Aさんの転職体験談です。Aさんの経歴を簡単に紹介すると…
Aさんはシステムエンジニアとして働いておられたのですが、会社の方針でエンジニアと営業を担当されていました。もともと人見知りで営業は苦手分野だったのですが、会社ために営業もこなしていたのですが、うまく行くはずもなく転職をすることに。
Aさんが転職を決めたのは37歳という年齢で、しかも初めての転職だったのですが、エンジニアの定年と言われている35歳を超えての転職活動はどういったものだったのでしょうか?
それではシステムエンジニアAさんの転職体験談を紹介します。
私は今年で42歳、妻と子供1人との3人暮らしです。IT業界に20年ほど籍を置くシステムエンジニアで、5年ほど前に転職を行いました。
ITエンジニアだけでなく営業もしていた前職
5年前の転職では、IT企業からIT企業へ同業種の転職でしたが、転職前後で仕事の内容は大きく変わりました。
転職する前にしていた仕事は、自社開発のパッケージソフトウェアの製造販売。ITエンジニアと言いながらも営業もこなしており、プログラミングをして開発をする傍ら、パッケージのターゲット企業のリストを手に入れ、アポ取りを行ったりもしていました。
もともと営業はかなり苦手分野で、人見知りがある私にはかなりツライ仕事でした。ですがシステム開発という仕事には遣り甲斐を感じていて、自社開発のパッケージにもそれなりに自信を持っていましたので、苦手な営業も必死にくらいついてこなしていました。
社内にいる他のエンジニアも私と同じような感じで、皆営業があまり得意ではないものの、頑張って作り上げたものをとにかく売るために、自分たちなりの営業で頑張っていました。
営業とエンジニアのかけもちを続けることが出来ず転職を…
転職しようと思ったきっかけは、やはり営業が順調にいかないこと。私だけでなく、職場の全ての営業(もとい、エンジニアw)が仕事を取れずに苦労していました。
本当に取れず、新規の売上が0円だった年度もあったほどです。正確には社のパッケージ製品を使っているお客さんから保守料金をもらえるため売上は細々とは入ってくるのですが、とても社員の給料を賄える額ではなく、微々たる額です。
従ってパッケージそのものの売上アップが常に会社の必達事項なわけですが、大手の優良な製品が出回る中、無名の会社のパッケージ製品を入れようと考えてくれる会社は極めて少なく、営業は困難を強いられました。
しかもその営業は皆プロと言えるようなものではなく、喋りの得意じゃない人見知りのエンジニアたちが見様見真似で行っているという状態だったので、より難しかったのだと思います。
営業のプロが数人いただけで、何か変わっていたのではないかとも思うのですが、上の判断でそのような流れになることはありませんでした。商品開発に直接かかわっている人間が営業に回るというのは、メリットもありました。商品のことを聞かれると適格に答えらるというところです。
自分たちが作ってきたものだからこそ、商品の説明となるとかなりの精度で答えることができていました。もともとは会社としてもそこを強みにしていこうという考えだったと思うのですが、実際に営業に必要なことは商品知識だけではなく、話の運び方や言い回し、お客さんによって説明の仕方や内容に変化を持たせることが大切なんです。
人懐っこさだけで商品を売る営業マンもいる中で、ただ淡々と商品の説明だけするような営業マンに誰も心は動きませんよね。
そこを身につける術を知らないまま、私たちエンジニアはとにかくがむしゃらに営業に回っていました。売れない理由は商品自体にも問題があったのかもしれませんが、私はやはり、営業力の乏しさもかなり原因となっていたのだと今も感じています。
それでも会社は会長の資金力でなんとか持っていたのですが、やがて資金も底をつき、待遇も下がってきたため、転職を決意しました。37歳の春頃のことです。
長年頑張ってきた会社なだけに、決意するのにも時間がかかりました。数年は悩んでいたのですが、やはり自分に向いていないと強く感じている営業をこのまま続けても、会社の立て直しにはつながらないだろうと思い、転職を決心しました。
転職エージェントに相談して知ったエンジニアの転職
転職を行うにあたり、まず大手の転職エージェント会社に経歴を登録し、転職先の希望や自身の強みなどについてエージェントに相談をしました。登録するまで知らなかったのですが、転職先の紹介や、履歴書の書き方などを指南してくれるサービスが無料で受けられ、このサービスには本当にお世話になりました。
まず困ったのが経歴についてです。エンジニアでありながら営業をしていたという私の過去の勤務業態のことを、どう書けばいいのかと悩みました。正直、エンジニアと言っているものの、営業にかなり時間を割いてたために、エンジニアとしてのキャリアは実は薄いわけです。正直なところ会社を辞める年は、年間のうち開発業務に携わっていたのはせいぜい1,2割。振り返ると私はエンジニアではなく、「殆ど営業」になっていました。
とはいっても、もともと苦手だった営業に転向は絶対にしたくはないという気持ちが強くありました。そもそも営業といっても社に卓越した営業ノウハウがあってそれを活用したというものではなく、本当に手弁当、素人の思いつき営業しかやってないので、本職の営業さんに敵うわけもありません。
従って、経歴もエンジニア中心に書きたいんですが、そうするとどうしても経歴に空白の期間が生じるんですね。その部分をエージェントに相談したところ、「正直に営業経験も書いたほうがいい」と言われ、営業経験は書くつもりがなかった私は驚きました。
理由は2つあり、ひとつは単に経歴の空白期間を書いてしまうと、その間休職してたんではないかとか、メンタルや身体の弱さを疑われて不採用になってしまう可能性が上がってしまうとのことでした。
もうひとつは営業経験を持つエンジニアは希少な上に、事業運営という観点では営業経験によってお金が入ってくることへの苦労を知っている人材は結構潜在的なニーズがあるんだそうです。
転職経験がのない私は、自分のこの特殊な働き方にもニーズがあるだなんて思いもよらなかったので、この提案はありがたいものでした。
また、私の場合年齢も気になっていました。転職時で37歳。ITエンジニアというスキルが有るものの、巷で言われている35歳転職限界説を過ぎてしまっていて、転職先なんて見つかるのかなという心配です。
そういった事もエージェントに聞いてみたところ、IT業界は今のところそんなに心配することはないという話でした。やっぱり求人が多くて、巷の一般的な限界説はあまり当てはまらず、40代でも結構転職出来ている人が多いのだそう。こういう話も、面と向かって人から実態感を聞けるというのはホントありがたかったですね。
エージェントに相談することで不安に思っていたいろいろなことがかなり払拭され、自信を持って転職活動を始めることができました。
その後エージェントから紹介された数社を選んで面談をし、ありがたいことに早いものでは数日、遅いものでも2週間程度で内定を頂くことができました。どこに行くか悩んだあげく、今の仕事で一番苦労した「事業の継続性」というか、ちゃんと地に足をついて堅実に収益を上げてきている実績のある会社を選んで、転職することになりました。
転職後はITエンジニアを専業として。
転職によって、晴れて(?)バッタもんの営業から生粋のエンジニアに戻った私。驚いたのは、IT業界ってこんなにエンジニアが多かったんだという衝撃です。
何を言っているかというと、今までは小さなソフトハウスの事務所で顔の知った仲間と一緒に細々と仕事をしてきたわけですが、今度の会社は客先に常駐して、100人単位のプロジェクトの中で業務を行っていくというもの。
ビルそのものがエンジニアしかいないという規模で、もう周りはエンジニアだらけ。なので、そこは刺激になりました。さらに言うなら、これだけエンジニアがいるということを知らずに働き続けていたかもしれない可能性を考えると、無知だった自分に少しぞっとします…。
一方で、営業的観点で物を見る必要性は殆どなくなり(要は仕事は勝手に湧いてくる・・・)今までは手弁当なりにも会社業務の殆ど全般を自分でこなしていたのと比べると、仕事の範疇は狭まって物足りなさも。
ただ、専門性を磨くという意味では、むしろこちらのほうが正解なんだなと納得しました。新しい仕事場には、先端の開発技術や生産性をあげるための取組とかがノウハウとしていろいろあって、目から鱗でした。
30代後半で新しいことを学んで吸収していくということに最初は不安がありました。昔ほどスムーズに覚えることができないのではないかとか、知らない間に頭が固くなっていることが足かせになるのですはないかとか、そういったことを考えていましたが、実際働いてみるとそうでもありません。
人間いくつになってもいろんなことを吸収できるように作られているんだな、と我ながら感心するほど、素直に新しいことを取り入れられている自分に驚いています。
また、新鮮な情報を取り入れることで、もっと取り入れたいという良い意味での欲がでるようになり、日々自分の成長を実感しています。営業という苦手分野を取り払ったことで、ストレスなく専門性を磨けて、今では部下も数人持つことが出来、管理職としての道も進み始めました。自分としては、いい転職ができたかなと思っています。
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